『鉄人』衣笠祥雄 追悼

 今年亡くなったのでまあ追悼番組なのだろう、昨夜、元広島カープの衣笠選手の番組をみて思わずうなった。母子家庭で黒人とのハーフ。父の名も知らず人知れぬ苦労もあったのだろうがその圧倒的な人間力に頭が下がり思わず涙。

 連続出場記録は日本記録で世界2位の記録を持つ衣笠に、デッドボールを投げ肩甲骨亀裂骨折という重傷を与えたのが巨人のピッチャー西本聖。両軍乱闘になったその場で昏倒しながら、謝ろうと近づいてきた西本に「お前アブナイからベンチに戻れ」。
 誰しも連続出場は無理だろうと思われていた翌日、代打で登場し、皆を驚かせるフルスイングで三球三振。試合後に語った彼の言葉が「一球目はファンの為、二球目は自分のために振った。そして三球目は西本のために振った」
こんなふうに言葉にすると、知らぬ人は別の印象を受けるかもしれないが、西本の言葉を聞けばわかる。「あの言葉がなかったからピッチャーは続けられなかった」

 奇跡の一球といわれる、日本シリーズの江夏の投球がある。ノーアウト満塁のピンチながら『絶対の守護神』を自任していた江夏の前でリリーフピッチャーが準備を始めた。それを見た江夏は激怒。しかしそれを察した衣笠に「お前しかいないよ」と声を掛けられ「彼の笑顔と白い歯を見て自分を取り戻した」という江夏は、次のバッターのスクイズに、投球の途中からスクイズを外すボールに切り替える離れ業。これでピンチをしのぎ広島カープは日本シリーズを制した。

 最後はインタビュアーに「選手は何の為にやってると思う?」と逆に質問。「観客の為ですか?」に、「そう、特に子供達のためにやっている」
「野球選手は子供たちにあんなふうになりたいと思ってもらうために野球をやっている。だから野球選手はいつでも正しく生きなければならない」

鉄人・衣笠祥雄ははるか高みにいる哲人でもありました。ご冥福を祈ります。


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