超弩級パンチ、モンスター尚弥

いやあ脱帽です井上尚弥。
勝ったとしても多少は手こずるだろうと思っていた、IBF世界バンタム級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)に圧勝!

 

 1ラウンドこそ井上尚弥も「ちょっとどうしようかと思った」というラウンド。意外にもロドリゲスが最初から積極的に打ち合いに来たからだ。これまで井上相手に打ち合いを挑んできた相手はいなかった。その意表を突く作戦に活路を見いだそうとしたのかもしれない。
 その作戦は間違っていなかった。最初にパンチを貰ったのは井上の方だった。積極的に出るロドリゲスに戸惑ったのか右ストレートを被弾する。やはり井上も人の子、体が少し硬いのだろう。こんなにパンチを貰う井上は初めて見た。

 だがさすが井上、ラウンド半ばあたりから少しずつパンチを当て始める。おそらくその井上の拳をグローブ越しに受けただけでパンチ力が分かったのだろう、急にロドリゲスが慎重になり始めて1ラウンドを終わる。

だがこのラウンドはおそらくほとんどのジャッジがロドリゲスにポイントを与えただろう。

 

 2ラウンド、井上が落ち着いたのかロドリゲスが怖気づいたのか、出だしで軽くはあるが井上のワン・ツー・スリーがロドリゲスの顔面にヒット。ロドリゲスも懸命に手を出すが、30秒過ぎパンチが交錯する中で至近距離から井上のコンパクトな左ストレートがさく裂。ロドリゲスがひっくり返った。すぐ立ち上がったものの鼻血が出ている。こんなに簡単に鼻血が出るのか?
 このコンパクトなパンチの衝撃の大きさを、受けた本人・ロドリゲスも最初わかっていなかったのだろうと想像する。ファイティングポーズをとって向かっていったもののダメージが遅れてやって来たのだろう。井上の軽い右ボディーで簡単に膝をついてコーナーに向かって泣きそうな顔で首を振る。
 だがまだ2ラウンド、コーナーはファイトを命じたのだろう。再び立ち上がってファイティングポーズをとるものの、押し寄せる井上の左ボディで簡単にひっくり返る。カウント6で立ち上がったもののもはや戦意なしと見たレフリーがストップ。

 いやいやこの井上の強さは次元が違うことがはっきりと証明された。
 間違いなくロドリゲスは最強の挑戦者であった。しかしそれは人間としての強さ。モンスター井上相手では敵ではなかった。
 プロフェッショナルであるロドリゲス陣営でも、最初のダウンを奪った井上のパンチ力の強さに気づけなかった。打たれた本人が気づかなかったのだから仕方がないとはいえ、その後の左右の軽いボディで膝をつきひっくり返るほどダメージを受けていたことに気づけなかった。それほど規格外れだった。
 昔時代劇で「切られたのに気づかず相手に向かって行き、途中で切られていたことに気づく」という陳腐なシーンがよくあったが、今回の井上尚弥のパンチでそんなことを思いだしていた。

 

 これはロドリゲスの心を折る敗戦だろう。ロマチェンコに猫に弄ばれるネズミのように敗れたクローラのコメントがよみがえる。

 「体以上に傷ついたのは、全力を尽くしたかった私のプライドだ……。彼の強さは驚異的だ。頭を打たれてフロアに落ちて、意識はあったのに立ち上がることができなかった。彼はとにかく特別だ。一発として無駄なパンチがない」

 今ロドリゲスは同じ気持ちだろう。まだ若いので頑張ってほしいが、同じクラスにこんな怪物がいては気力が甦るかどうか。

 

井上尚弥がロマチェンコと並ぶパウンド・フォー・パウンドであることを誰もが認める試合であった。
この試合を見たスーパー・フライ級の猛者たちは、井上尚弥が階級を上げてくれたことを感謝していることだろう。

 


コメント(1)

  1. reporterより 

    しかしパヤノを右一発、ロドリゲスは実質的に左一発で片づけてしまったので、WBSSの後、試合相手が見つかるかな? 次のドネア戦がバンタム級最後の試合になるかもね。

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