藤井を狂わせた羽生の妖気
渡辺棋王に挑戦しタイトル奪取寸前まで行くも、まさかの失着で敗れた藤井六冠。
棋王戦第3局は、将棋ファンなら誰もが驚きを隠せない一局になった。
これまで差す手は殆どAIの示す『最善手』、終盤は詰み筋があれば逃すことない『正確な寄せ』、途中でどんなに不利になってもAIを凌ぐ『驚愕の一手』で逆転してきた天才藤井を襲う変調としか言いようがない。
だが兆しはあった。先の王将戦で羽生・永世七冠に2勝2敗のタイに持ち込まれた第4局。
難しい局面ではあったが、終盤にもつれかろうじて羽生・永世七冠の失着で勝ちを拾った。
次の第5局では勝ちを収め防衛に王手をかけてはいるが、以前のように『すべて最善手』という神がかり的な強さに陰りが見えるのだが、その理由は解説者が言うように疲れだけだろうか?
確かに六冠も保持していれば防衛戦だけでも引きも切らない。一理はあるだろが、私には藤井君が終盤で見せるこの乱れは、羽生永世六冠との王将位防衛戦で始まったように見えるのだが?
羽生九段と言えば初の全タイトル独占という離れ業を演じて棋界を揺るがせた大天才。今の藤井六冠に優るとも劣らない歴史に残る大棋士。
「兄たちは頭が悪かったので東大に行った」
と言って憚らなかった天才棋士・米永邦雄・永世棋聖が、ある時、若き羽生の一手をみて「おお!これはすごい!この手は見えない!」と感嘆の声を上げた場面を思いだす。
一時期は不調に陥りタイトル戦から遠ざかっていた羽生・永世七冠は今期復活して絶好調。王将戦は通算100期タイトル獲得という偉業達成のかかった大一番。
その巨星・羽生が、すい星のように登場し、棋戦負け知らずで、今年中に全タイトルを総なめにする勢いだった藤井聡太君の前に立ちはだかった。
巨星・羽生の磁場(妖気)にあてられたかのように最善手を外し詰み筋を誤る藤井王将。
その影響で、これまでタイトル戦で殆ど負けなかった渡辺棋王に逆転負けを喫したのではないか?
そしてもう一つの思いは、調子を落としていた羽生永世七冠の復活もまた、すい星のごとく登場した藤井聡太六冠の磁場(妖気)にあてられた結果ではないのか?というものだ。
タイトル維持のかかる、羽生・永世七冠と闘う次の王将戦。
タイトル獲得がかかる、永世竜王・渡辺明棋王との棋王戦。
なんだ?このびっくりする、豪華・絢爛極まりない対局は!
持ち時間の長い将棋は仕事が手につかないんだお!
2面指しでやってくれないか?!